1年で一番大切な日にまつわる食べ物や風習
上のイラストレーションには、1930年代に若い日本人女性二人がカラフルな着物をまとい、コタツに入ってくつろいでいるレトロなお正月のワンシーンが描かれています。左の女性は編み物をしており、右の女性はお正月の挨拶状を熱心に読んでいます。コタツの上には冬の日本に欠かせない果物「みかん」があります。右奥の床の間には「鏡餅」が飾られ、左奥の屏風には縁起がいいとされる「鶴」が描かれていて、なんともゆったりとしたおめでたいお正月の様子がうかがい知れます。今回はお雑煮など正月料理や飾りのほか、日本人がお正月を誰とどのようにして過ごすかをご紹介します。
(1939年制作「初だより」須藤しげる抒情画集より 国書刊行会, 1985年より)
目次
1. 典型的な日本人のお正月の過ごし方とは?
2. お正月の食べ物あれこれ(お雑煮を中心に)
3. お正月飾りに込められた意味(しめ飾り、鏡もち)
4.子供は何して過ごす?「正月遊び」あれこれ
5. 正月の恒例イベントや風物詩
6. まとめ
1.典型的な日本人のお正月の過ごし方とは?
新年はまず「明けましておめでとうございます」という挨拶から始まります。大晦日の夜「除夜詣で」をしていない場合、おせち料理と雑煮を家族で楽しんだ後、「元日詣で(初詣)」に出かけます。実際は大晦日や元日に参拝しなければならないというルールはなく、混雑を避けて松の内と呼ばれる1月7日(京都などでは15日)、もしくは陰暦で新年を意味する2月4日までにお参りすればいいようです。
忙しい年末を過ごし、仕事などで家族と離れて生活している人は帰省して家族と過ごすのが、日本人にとって一般的なお正月の過ごし方。親戚、友人宅などに新年の挨拶に行ったり、新年会を催したり、届いた年賀状(新年のお祝いの言葉などを盛り込んだグリーティングカード)を読んだりして過ごします。後ほど紹介する正月遊びやイベント、バーゲンなどに出かけて忙しいお正月を過ごす人がいる一方、一人住まいの人の中には帰省せず、お正月を寝て過ごす「寝正月」を決め込み、ここぞとばかり休息を取る人もいます。
2. お正月の食べ物あれこれ(お雑煮を中心に)
日本人にとってお正月にお屠蘇(とそ)と一緒にいただくおせちとお雑煮は欠かせない食べ物です。今回はお雑煮に焦点を当て、おせち料理とお屠蘇については次回に詳しくご紹介します。
(写真は上「関東風雑煮」と下「京風雑煮」 画像提供元 : 公益社団法人京のふるさと産品協会 https://www.maff.go.jp )
「雑煮」とは、様々な食材ともちをひとつの鍋で煮たスープのこと。室町時代に上流階級の間で祝いの食として定着し、一般庶民に広まったのは江戸時代の元禄のころ。元来、米は日本人とその文化の基盤であり、米(この場合はもち米)で作った餅を神々にお供えし、感謝の意を込めていただく「神人共食」がお雑煮の原型です。雑煮には、土地でとれたローカル食材を使うのが特徴。風土による材料の違いもありますが、それ以上に各家庭の個性も反映され、家庭ごとにそれぞれの雑煮レシピがあると言えます。伝統食とはいえ、定型レシピがないのが特徴です。
雑煮のお餅は、日本の東側では「四角い餅」、西側は「丸い餅」を使います。地域ごとに雑煮を分類すると、東北と関東の多くの地域で「すまし汁に角餅」、京都などを中心にした近畿地方で「白味噌の汁に丸い餅」、九州や四国、中国地方で「すまし汁に丸い餅」となります。また、お餅を焼いていれるか、煮るかでも違いが出たりします。関東では「東京江戸雑煮」スタイルが一般的。醤油ベースの澄まし汁に、焼いた角餅が入っています。具材は鶏もも肉、しいたけ、小松菜、にんじん、三つ葉など。一方、「京風雑煮」は白味噌仕立で焼かずに煮た丸餅入りです。具材は丸く切った金時にんじん、大根や里芋などシンプル。
四国の香川県の雑煮は、地元名産のいりこのだしで甘いあん餅を煮て、白味噌で仕立てたあん餅入り雑煮=写真=。餅から甘い小豆あんが溶け出し、味噌の塩味とあいまって独特のおいしさになると言いますが、他の地方出身者からすると驚きのコンビネーション。江戸時代、地元の特産品でかつ高価だった「和三盆」(砂糖)を、役人に見つからないようあんに練り込み、餅に隠して食べたのが由来だそう。お雑煮は、各地や家庭の風土や歴史を色濃く反映しているのです。
(画像提供元:香川県農村整備課)
3. お正月飾りに込められた意味(しめ飾り、鏡もち)
しめ飾りとは、自分の家が豊作や健康をもたらす年神様をお迎えするのにふさわしい場所であると示す目印として、玄関と神棚に飾るものを言います。伝統的なしめ縄の土台部分には稲わらが使われており、いろいろなおめでたいモチーフを盛り込みます。例えば、写真のしめ飾りのように、長生きの象徴「鶴」、1年中緑で力強い「松」、赤い実をつけ、金運がつくとされる「万両(まんりょう)、万は10000、両は昔の貨幣の単位)」をあしらい、幸運とされる金や赤の扇が豪華さを添えています。
また、しめ縄同様、日本のお正月の飾りに欠かせないのが、鏡餅。大小の丸い餅を重ね、みかんを一番上に乗せるのが典型的な鏡餅のスタイルです。神棚や床の間に飾る鏡餅には、お正月期間中に年神様が宿るとされています。丸い形は魂が宿るとされる鏡を模したもの。大小の丸い餅を二段重ねることで、新たな1年を重ねるという意味を込めています。トップには、柑橘類の一種で家族繁栄を象徴するダイダイを飾ります。地方によっては、干し柿や昆布などの縁起のよい素材を飾り付けたりします。伝統的に鏡餅は年末の餅つきの際に作られていましたが、近年では真空パックの簡易版を購入する人が多くなっています。
4. 子供は何して過ごす?「正月遊び」あれこれ
高く上がる程子供が元気に育つとされ、男の子の無事な成長を願う「凧揚げ」など、「双六(すごろく)」「かるたとり」「福笑い(ふくわらい)」や「羽根つき」などが「正月遊び」として昔から行われてきました。
上の絵に描かれているように、羽根つきに使う羽(シャトル)の根元の黒い玉を「無患子(むくろじ=病気無しの子)」と言い、「子どもが病気にならないように」と験担ぎしたと言われています。羽根つきで羽を落とすと、おでこやほおにX印をつけられるなど、墨をたっぷり含んだ筆で顔に落書きをされますが、これは本来「罰」ではなく、「魔除けのおまじない」だったそう。(1938年制作, 高畠華宵大正ロマン館図録 (高畠華宵大正ロマン館, 1990年より)
5. 正月の恒例イベントや風物詩
お正月期間には多様な「初イベント」が目白押し。書道の世界では通常2日に「字が上手くなること」を祈願して「書き初め」を行い、新年にふさわしい抱負やおめでたい言葉を書き上げます。茶道では「初釜(はつがま)」と呼ばれる新年の祝いお茶会が1月10日前後に行われます。新年初のお茶を淹れるため、お釜に火にかける「初釜」には、稽古初めや新年会のがあります。懐石料理をいただき、じっくりとお濃茶とお薄茶を楽しみます。相撲の初場所が開催されるのもこの時期です。
また、「福袋(ふくぶくろ)」は、毎年楽しみにしている人が多いお正月のショッピング・イベント。中が見えない袋の中に実際の値段以上の商品が詰め込まれているので、通常よりお得に購入できるのがウリです。最近では洋服、食品、家電など様々な福袋が用意されています。貴金属や宝石などが入った数百万円する高級版や旅行やエステなど体験型の福袋も登場し、人気のデパートやお店には初売りの前日から長蛇の列ができます。また、最近では中身が見える透明な袋入りなど、入っている商品を事前選べるタイプも販売されていますが、新年の運だめしとして福袋を購入する人も多いようです。
6. まとめ
また、例年お正月に話題となるのが東京豊洲市場の「マグロの初競り」。1年最初の競りということで、その年の景気動向を占う指標としても話題になります。現在までの最高値は有名寿司チェーンすしざんまいを経営する「喜代村」による2019年の3億3360万円(3ミリオンUSドル)です。マグロの体重が278キログラムなので、なんと1キロあたり120万円(1万USドル超)。1年を盛り上げ、また話題になる目的で上がりに上がった金額でした。
今回は日本のお正月の過ごし方を、伝統的なものから、最近の過ごし方までご紹介していきました。あなたの知っている日本のお正月の習慣はありましたか?また、あなたの国と同じ・・・なんてものも?
新年は心機一転、何かを始めるのにぴったりの時期。
是非今年こそ、J C Iで日本料理の道を歩んでみませんか?
2022年が始まりました!光り輝く素敵な年となりますように。
日本であなたを待っています!
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