2021年の冬至は12月22日。日本には寒さに耐え、春を迎える折り返し地点でもある冬至に食べる独特な食べものがあるのをご存知ですか。また、旬の果物であるゆずを入れたお風呂に入る習慣もあります。栄養的にも理にかなった食材を取り入れ、大事な家族や 友人たちの健康維持を祈願する日本ならではの冬至にまつわる風物詩をご紹介します。
目次
1. 冬至とは?
2. 日本の冬至の風習1:健康にも美容にも!柚子湯 3. 日本の冬至の風習 2:栄養たっぷり!いとこ煮と小豆粥
4. 日本の冬至の風習 3:験を担いで食べる!「冬の七種(ななくさ)」
おわりに
1. 冬至とは?
冬至は一年で昼の時間が一番短く、太陽の南中高度が一番低くなる日。
地球と太陽の位置関係により生じます。冬至の日は12月22日前後にあたり、来年2022年も今年同様12月22日です。日本では夏至に比べて昼間時間が5時間ほど短くなります。
1年を通じて最も昼時間が長い「夏至」の対極にある「冬至」は、生命の源、太陽の力が最も弱まるため、「死をもっとも身近に感じる日」として古来から恐れられてきました。
実際、現在のように暖房器具や暖かい衣類などの恵まれた環境がない時代には、寒さ自体が人間にとって死を感じさせる時節だったでしょう。
2. 日本の冬至の風習1:健康にも美容にも!柚子湯
とはいえ、冬至で最短になった日照時間は、冬至を境にしてどんどん長くなりながら春へ向かいます。まさにドン底から右肩あがりに転換する折り返し地点が冬至なのです。そのため、日本では衰えた運を幸運へと切り替える「禊ぎ」という験担ぎとして、ゆずをお風呂に浮かべた、『ゆず湯』湯に浸かる風習が生まれました。
この「柚子湯」は江戸時代、銭湯の季節イベントとして始まったとされ、寒い時期に爽やかな香りと鮮やかな黄色の柚子が浮かぶ湯に浸かるひと時はまた格別です。日本語の冬至の読み方は「とうじ」ですが、お湯に浸かることで病気を治す「湯治(日本語読みで同じく「とうじ」)」の意味を掛けています。日本人は昔から言葉遊びが大好きです。
冬が旬の柚子が邪気を払いう厄払いとして、また、今後の運を呼び込む前の儀式として定着しています。もちろん、旬の果物でもある柚子を使った柚子湯には、体を温めて冷え性を緩和する血行促進や風邪予防の効果のほか、柑橘系の香りの癒し効果も期待できます。ただし、果汁は酸を含みますので、敏感肌の方はご注意くださいね。
3. 日本の冬至の風習 2:栄養たっぷり!いとこ煮と小豆粥
日本で冬至に食べるものと問われれば、地域にもよりますが、まず思い浮かぶのがかぼちゃと小豆を煮た「いとこ煮」。かぼちゃや小豆を入れたおかゆを食べる地域もあります。かぼちゃの収穫自体は夏なのですが、いとこ煮に使う小豆同様、かぼちゃは保存性に優れ、追熟することで冬に甘みが増して美味しくなる数少ない食材であること、また寒さの厳しい冬に摂取しにくくなるカロチンなどの栄養素が豊富なのが理由とされています。砂糖が貴重だった時代、かぼちゃのほんのりとした甘味は大きな癒しの一皿だったのでしょう。
中国の古い医学書『本草』にも小豆には「毒を殺し、痛みを止める」との効果効能が記載されており、厄払いとして冬至に小豆粥を炊く風習も古代中国にありました。
なお、「いとこ煮」とは、小豆などの乾燥していて煮えにくい食材から順番に加えて煮ていく調理方法「追々(おいおい=甥甥と同じ発音)、銘銘(めいめい=姪姪と同じ発音)煮る」から転じ、「おい」と「めい」の語呂合わせから生まれた呼び名だそう。そのため、小豆とかぼちゃ以外の組み合わせのケースもあります。
<一般的なかぼちゃと小豆のいとこ煮(家庭、地域によって多様なレシピがあります)>
茹でた小豆 120グラム
かぼちゃ 1/4個(一口大に切る)
砂糖と醤油各大さじ1
水200cc
砂糖と醤油各大さじ1、水200ccを鍋に入れて煮立たせたら、かぼちゃが重ならないように並べ、フタをして約10分ほどかぼちゃがやわらかくなるまで煮ます。
ゆで小豆を加え、軽く混ぜて調味料が満遍なく行き渡るように絡めて出来上がりです。
いとこ煮は、醤油と砂糖の甘辛い味付けがポイントです。すでにかぼちゃと小豆の優しい甘味があるので、砂糖の量はあくまで目安。お好みで加減してください。
4. 日本の冬至の風習 3:験を担いで食べる!「冬の七種(ななくさ)」
また、冬至の食に関しては、うどん、金柑(きんかん)、人参などの「ん」のつく食材を食べることで運気が上がるという言い伝えが全国各地にあります。かぼちゃの音読み「なんきん」にも当てはまります。お正月後の「春の七草」はよく知られていますが、これら「ん」のつく食べ物を集めたのが「冬の七種(ななくさ)」です。
南京(南瓜):なんきん(かぼちゃ)
蓮根:れんこん
人参:にんじん
銀杏:ぎんなん
金柑:きんかん
寒天:かんてん
饂飩:うんどん(うどん)
冬の七種を日本語のひらがな表 記すると「ん」が2つあるので、「運」をたくさん取り込む「運盛り種」と呼ばれます。地域にもよりますが、冬に入手しやすい食材でかつ、健康維持に役立つアイデムばかりです。寒天は寒天作りの最盛期は冬場ということが反映されているのかもしれません。また、冬至に「砂おろし」と称してこんにゃくを食べる地方もあります。繊維質が豊富なこんにゃくを食べることで、腸内にたまっている砂、残留物を排出する意味合いがあるそうです。昔からこんにゃくを「腸の砂おろし」「胃のほうき」などの別名で呼ぶ地域もあり、冬至の期間に当てはまる年末に体の大掃除として食べるようになったようです。
5. おわりに
冬至の日には、日本各地で数多くの神社が「冬至祭」を執り行っています。呼称は様々ですが、冬至限定の「一陽来復(いちようらいふく)」お守りやお札の配布があったり、かぼちゃや小豆などの素材が入った冬至汁粉やぜんざいが無料で振るまわれたりします。
寒い冬ならではの理にかなった食べものや慣習を取り入れて、家族や友人など大切な人たちの健康や運気 上昇を祈願する冬至。
冬至の七種である旬を迎えるキンカンやゆずは、日本国外では生果は無理でもアジア系マーケットやジャム、ドライフルーツにしたものなどが手に入るかもしれません。韓国では柚子ジャムをあったかいお湯に溶かした柚子茶が大人気です。体を温めるうどんや栄養たっぷりのかぼちゃ、小豆なども入手できたら、ぜひあなたの冬の食生活にも取り入れてみてくださいね。
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