バラエティー豊かな鍋をトレンド含めてご紹介
日本の冬の定番料理と言えば、食卓で熱々をいただく「鍋」。鍋料理は、調理に使用した「鍋」に料理を入れたままの状態で食卓で加熱しながら食べる料理の総称です。「鍋物」「鍋料理」とも呼ばれます。「スキヤキ=写真=」「しゃぶしゃぶ」などの名前を聞いたことがある人も多いかもしれませんが、これらも鍋料理の一種。一つの鍋で色々な食材を煮て食べる鍋料理はバラエティー豊かで、食材だけでなく、スープ、つけダレなどで色々なアレンジが可能。鍋料理について道具や食べ方のルールも含めて紹介します。 目次
鍋料理の基礎知識〜その起源〜
鍋に使われる種類と道具など
基本の鍋の作り方や種類
鍋を食べる時の食べるルールってあるの?
まとめ
1. お鍋の基礎知識〜起源〜
鍋料理とは、鍋で調理した料理を取り分けず、鍋に入れたままの状態で食卓に出し、加熱調理しながら食べる料理のこと。多くの場合、卓上コンロ(=カセットコンロ、付け替え可能な小型ガスボンベを使用)やIH調理器などで加熱しながら、それぞれのお椀や、つけダレを入れた器に取り分けて食べます。上質な牛肉を味わうすき焼きやしゃぶしゃぶ、蟹などの豪華な海鮮を盛り込んだ鍋=写真上=は、日本人にとってご馳走!誕生日や記念日などに奮発して食べる鍋です。また、気のおけない友人と鍋を囲んで集まるシーンは冬の風物詩です。
鍋は複数で囲んで食べるのが一般的ですが、旅館で供される会席料理や宴会では、小鍋で一人前ずつ供される事も 。一人暮らしの世帯が増えた現在では、1人用の小鍋も売られています。
昔の日本家屋には、台所にあるかまどとは別に現在のリビングルームにあたる部屋に灯や暖房の役割を兼ねた囲炉裏(いろり)があることが多く、そこで煮たり、焼いたりした料理を食べていました。18世紀後半電気やガスの普及が始まると、囲炉裏が姿を消し始めます。料理店ではポータブルな火鉢などを使用した「小鍋仕立て」と呼ばれる鍋料理が発案され、鍋から複数人が鍋をシェアするという鍋料理が発達したのだそうです。
明治時代になると肉食が一般化し、すき焼き風の「牛鍋」の流行やちゃぶ台が普及したことや、調理の近代化が進んだことで鍋料理が家庭で浸透しました。さらに、カセットコンロなどの普及によって、家庭でも鍋料理が食べられるようになりました。
2. 鍋に使われる種類と道具など
日本の鍋料理に使用する鍋として、最もポピュラーなのは陶器製の土鍋①です。土鍋は鉄鍋に比べて熱がじっくりと通り、保温性に優れています。長時間煮込んでも焦げる危険性が低いので鍋料理に適しています。①土鍋は、鍋の基本とも言える「寄せ鍋」など、色々な鍋料理に用いられます。「寄せ鍋」は、魚介類・肉類・野菜・きのこ・豆腐・しらたきなど多くの材料を薄味に調味しただし汁で煮ながら食べる鍋料理の総称で、いい変えれば何を入れてもOK。
地方の産物が入り特色が出るほか、 味付けとしては、塩、醤油、酒、味噌(赤出し、白みそ)などが一般的。具材を食べ終えたら、色々な具材の旨味が滲み出た汁にうどんやご飯などを入れて味わいます。お相撲さんたちが常食する「ちゃんこ鍋」も寄せ鍋の一種です。② 卓上コンロ③とりわけ用の菜箸(スープ用にお玉がつくことも)④小鉢(この場合、醤油ベースのぽん酢入り)⑤れんげ
一方、具材を煮込む前に焼く工程があるすき焼き(注:肉を焼かずに割りしたと呼ばれるベースに肉を入れるなど、複数の調理法あり)などは、鉄やステンレスなどの金属製の鍋が用いられます。湯豆腐、しゃぶしゃぶなども専用に作られた形状の鍋を使う場合(専門店など)があります。土鍋がない場合、通常土鍋が使われる料理を金属鍋で代用しても大丈夫。
↑最近人気の中華風しゃぶしゃぶ、火鍋(具材は牛、豚などの薄切り肉や肉団子、野菜など。スパイシーとマイルドなど2種類のスープベースが選べるのが特徴)
↑煙突があるしゃぶしゃぶ鍋。煙突を付けることで鍋と火が触れる面積が大きくなり、スープが冷めにくくなります
ユニークな鍋に旅館での夕食や宴会などで供される「紙鍋=写真上=」があります。その名の通り、和紙を鍋がわりにしてスープと具材を盛り、直火で加熱する鍋です。なぜ紙が燃えないのか不思議ですよね。実は、紙が燃えないのは、水の沸点が100℃を超えない一方で、紙の引火点が300℃以上と高いため。 つまり、中に水分がある限り紙の鍋は燃えないのです。食事が終われば捨てるだけで片付けも簡単なこともあり、大人数での宴会に驚きと華を添える鍋です。
3. 基本の鍋の作り方や種類
それでは、日本にはどんな鍋料理があるのでしょうか?[4]
大根、ちくわなどの練り物などを醤油ベースのスープで煮込んだ「おでん=写真上=」、韓国の辛い漬物、キムチを入れた「キムチ鍋」や、「もつ」と呼ばれる豚の腸などを入れた「もつ鍋」、シンプルな昆布出汁仕立ての「湯豆腐」、薄切りの牛肉などを出汁の中にくぐらせるようにして素早く調理する「しゃぶしゃぶ」、鳥肉をメインにした鍋「水炊き」など、様々な鍋料理があります。地方の名前を冠した鍋も多く、例えば「石狩鍋」の「石狩」は、サケ漁で有名な北海道石狩で生まれた漁師料理。味噌ベースのスープでぶつ切りしたサケの身とあら、野菜などを煮込んだ鍋です。
↑ 石狩鍋 https://www.maff.go.jp 「うちの郷土料理」より
鍋料理とひと口に言っても、使用する素材から鍋の種類、味付けなど多種多様で、日本各地で名物鍋も数多く存在します。基本的な醤油ベースの寄せ鍋の作り方は以下の通りです。
基本的な寄せ鍋の作り方(4人前)
<材料>
・たらの切り身(2、3切れ、または好みの白身魚)
・鳥肉(もも、胸、手羽など好みの部位、200~300g)
・えび(4尾、または蟹など)
・木綿豆腐(1丁)
・白菜(1/4株)
・春菊(1/2束、ほうれん草などでも可)
・ねぎ(1本)
・人参(1/2本)
・えのきだけ(1袋)
・しいたけ(4枚)
<醤油味のスープベース>
・昆布または鰹出汁(800ml)
・みりん、酒(各大さじ4)
・醤油(大さじ3)
①たらの切り身、鶏肉は食べやすいひと口大に切っておき、えびは尾だけ残して殻をむいておきます。臭みが気になる場合は、分量外のお酒を少々ふりかけておいてもいいでしょう。豆腐は8つ程度に切ります。
②白菜は柔かい葉と硬い芯に分け、葉は5センチ幅のザク切り、芯は煮えやすいよう、やや小さめの4センチ幅に切ります。春菊は半分程度に切って、にんじんは2,3ミリ程度の厚さにスライスしておきます。ねぎは1センチ幅に斜め切り、えのきだけは根元を切り落とし、割いて小分けにしておきます。しいたけは石づきを切り取ります。
③土鍋に醤油ベースの材料を火にかけて煮立ったら、まずは煮えにくい鶏肉、たら、えびを入れます。これらの材料からは旨味がスープに出て、スープがより美味しくなります。次いで煮えにくい白菜の芯、人参、しいたけ、えのき、ねぎ、春菊、豆腐、白菜の葉の順に加え、全体に火が通るまで煮たら出来上がりです。具材の分量や種類はお好みでアレンジしてください。具材を食べ終えたら、うどんやご飯(材料記載外)などを加えてスープの旨味を存分に味わうのも鍋の醍醐味です。
↑写真:シンプルな湯豆腐は京都名物としても知られています。
5. 鍋を食べる時の食べるルールってあるの?
↑ 豚の生もつ(腸など)が入ったもつ鍋
バラエティー豊かな鍋料理ですが、共通するのは「一つの鍋を囲み、みんなでいただく(共有する)」スタイル。食べる人みんながが気持ちよくシェアするという点から、日本人独自の配慮に基づく鍋料理のマナーを知っておくのも大切。具材がぐつぐつ煮えて食べ時になったら、取り分ける順序や配膳にも配慮が必要です。
鍋に具材を入れる際、鍋から具材を取り出す時も、鍋のそばにいる人が自発的に行うのが基本。通常、鍋(食事)を用意した人(ホスト)が担当します。また、鍋から遠くにいる人、目上の方、子供などを優先してとりわけます。具材を盛り付ける際は、量や種類に偏りがないように公平に。特に鍋のメインとなる肉や海鮮などは、平等な配分になるよう分量に気をつけます。しゃぶしゃぶなど自分で具材を調理する場合も、一人で欲張らないよう気をつけます。
また、鍋料理を取り分ける際には、専用の取り箸やお玉を使います。取り分ける際も、鍋の中身をかき回さないようにしましょう。
↑ 鶏肉の濃厚な出汁が特徴の水炊き
5. まとめ
冬の食の風物詩、「鍋」にまつわる情報をお届けしました。一つの鍋で調理した食べ物をシェアする鍋は、和の心(ハーモニー)を大切にする日本人の食を通じたコミュニケーションの形でもあると言えるでしょう。家族や親しい友人などと一緒にいただく鍋は、心も体も温めてくれます。あなたが食べてみたい、もしくは食べたことがある鍋はありましたか?
伝統的な寄せ鍋や湯豆腐などに加え、最近ではカレーやトマト、チーズ味、豆乳ベースのスープや、中華風火鍋やキムチ鍋、フォンデュなどのアレンジや種類も増えてきた鍋。上の写真、鍋中央の白熊は、最近流行の「大根おろしアート」。すりおろした大根で形作られています。食べるのをためらう可愛さで、日本人の遊び心を感じさせますね。
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