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天然フリーズドライ!日本の伝統「凍り豆腐」

注目の栄養価やユニーク活用レシピをご紹介

豆腐はもはやヘルシーフードの代表として人気を博していますが、さて、あなたは豆腐を凍らせ、乾燥させた「凍り豆腐」=写真=はご存知ですか?凍り豆腐は、東北地方や長野県などの寒冷な山間部で古くから食されてきた日本の伝統的な保存食。「豆腐を凍らせる?」と驚かれる方も多いでしょう。さらにカチカチになるまで「乾燥させる」のですから、食べたことがない方は、「一体どんな味?」と興味深々では。今回は真冬に仕込まれる凍り豆腐について、その起源や産地と作り方、栄養に関する情報やユニークなレシピをご紹介します。 目次 1. 凍り豆腐の起源はふたつ! 2. 大豆の栄養が濃縮!凍り豆腐の栄養素 3. 市販品の凍り豆腐を使ったレシピ 4. 手作り即席凍り豆腐を使ったレシピ 5. まとめ


1. 凍り豆腐の起源はふたつ!

↑ 雪景色の高野山。この寒さの中、「高野豆腐」が生まれたそう。 「凍り豆腐」は、その名が示す通り、豆腐を凍らせた食べ物。実は、その起源を遡ると2系統(けいとう)あるのです。一つは和歌山県の日本仏教の聖地、高野山で生まれた「高野豆腐(こうや=地名)」で、もう一つは信州や東北地方の寒冷地の農村地帯で育まれた「凍(し)み豆腐(しみ=凍った)」です。地域によって呼称に違いがありますが、統一名称として、日本農林規格JISが規定した呼称が「凍り(こおり)豆腐」です。統一名称としては、「凍り豆腐」を使います。 凍り豆腐の起源については諸説あるのですが、「高野豆腐」に関しては、和歌山県の北部高野町に位置する「高野山」が発祥の地とされています。弘法大師・空海によって開かれた日本仏教の聖地で、2016年には世界遺産に登録されています。その高野山のお寺で若い僧が冬の寒い夜にうっかり豆腐を戸外に出したままにしてしまい、翌日になって凍った豆腐を食べたらおいしかったという説が定説になっています。空海には、大豆とともに豆腐の作り方を留学先の中国から日本に持ち帰ったという伝説もあり、高野山で修業した層たちが仏教の教えを全国に伝えた際に、軽量で持ち歩きしやすく、栄養価も高い保存食である高野豆腐も全国各地に広まったとされています。

↑ 高野山で供される精進料理。手前中央の器に高野豆腐の含め煮があります (写真提供2点とも:公益社団法人 和歌山県観光連盟) 一方、「凍み豆腐」は冬に気温が零下になる極寒地で桃山時代頃から作り始められたと言われてます。冬季にスライスした固い豆腐を藁で編んで戸外につるして置くことで、凍結と日光乾燥を繰り返して作ります。冬が厳しい土地で保存食として定着し、特に日本アルプスなどの山々に囲まれる長野県では、農家の冬の副業として人気となり、産地化。現在では、長野県は日本における凍り豆腐生産量98%を占める一大生産県となっています。ただし、現在は、天候に左右されない「人工冷凍法」による大量生産が可能なため、伝統的な製法の凍み豆腐を作っているケースはごく少数になっています。

↑ 硬くみっしりとした豆腐をスライスして作ります


↑ 零下に気温が下がる厳寒期に軒下に吊るして凍結と乾燥を繰り返します

↑ 出来上がった凍み豆腐。スライスした豆腐を藁で編んで吊るすのが伝統的な手法



2. 大豆の栄養が濃縮!凍り豆腐の栄養素

畑の肉とも呼ばれている「大豆」が原料の凍り豆腐は、大豆の栄養分を濃縮している食材。市販の一般的な凍り豆腐1枚約20グラム(103キロカロリー)の重量のうち、植物性たんぱく質の占める量はほぼ半分の9.6グラム、牛乳240mlに相当します。成人男性の1日におけるたんぱく質平均必要量は50gなので、凍り豆腐を約5枚食べるだけで1日分を賄える計算になります。肉や魚、乳製品から摂取できる動物性タンパク質に比べ、なかなか摂取しにくい「植物性」たんぱく質がたっぷり含まれているのがポイントです。 また、約20グラムの凍り豆腐1枚には、絹ごし豆腐一丁(300g)分とほぼ同じカルシウム(130mg)が含まれています。成人男性の1日におけるカルシウムの平均必要量650mgの約20%が凍り豆腐1枚で摂取可能です。凍り豆腐の成分のうち、33.2%を占める脂質ですが、そのおよそ8割が中性脂肪や悪玉コレステロールを減らし、血管の健康を維持して高血圧を防ぐ不飽和脂肪酸です。肉や乳製品に比べ、ヘルシーな脂質を摂取できるのも魅力的です。 鉄分も豊富なため、貧血予防にもおすすめ。また、豆腐などの大豆製品同様、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きを持つ大豆イソフラボン、脂肪代謝を促進する大豆サポニン、脳の活性化を促すレシチン、老化を予防するビタミンE、マグネシウム、食物繊維も豊富なのは、特に女性に嬉しいポイントです。 なお、凍り豆腐は穀類やいも類などと比べ、糖質の量が非常に少ないため、低糖質ダイエットの食材としても脚光を浴びています。特に粉末状にした「粉豆腐」=写真上・中央=は、小麦粉の代わりにグルテンフリーのおかし作りにも使えます。栄養の面だけでなく、植物性という点からも、ベジタリアン、ビーガン料理に食べ応えや満足度をプラスできる食材として注目されています。 ※五訂増補日本食品標準成分表:文部科学省より



3. 市販品の凍り豆腐を使った活用レシピ

あなたの住む国でもし凍り豆腐が入手できたら、ぜひ日本人に親しまれている「含め煮」を作ってみましょう。ふっくら柔らかく戻す方法も伝授します。また、ベジタリアンの方に喜ばれるパスタソースと栄養アップリのフレンチトーストをご紹介します。 <市販の凍り豆腐の基本の戻し方>

  1. ボウルに50℃ぐらいのお湯を用意し、凍り豆腐を浮かすように入れます。

  2. 10分間ほど浸して中までお湯が染み込み、芯がなくなったら、軽く手の平の間で水気を絞ります。

  3. 好みの大きさに切ります。

*水で戻す場合や、戻す工程がいらないタイプも市販されています。 <電子レンジで戻すクイック法>

  1. ボウルにたっぷりの水を用意し、凍り豆腐を3分間つけて水分を含ませます。

  2. 凍り豆腐を耐熱皿に並べ、ラップをして電子レンジ(500W)で2分間加熱します。

  3. 熱いので注意して取り出し、お好みのサイズに切ります。

*しっかり水気を切ってジッパー付き袋に入れれば冷蔵なら3日、冷凍なら1か月ほど保存可能。 <基本の含め煮> 凍り豆腐を使った一番基本の含め煮のレシピ=写真上=です。 材料(2人分) 凍り豆腐:2枚(事前に戻し、食べやすい大きさに切っておく) にんじん:2ミリほどの厚さのスライス4枚 シイタケ:2個 インゲン:2本 だし汁:400cc(ベジタリアンの方は昆布だし、そうでない場合は鰹だしを使ってください)  薄口醤油 小さじ 2 砂糖:大さじ 2・1/2 酒・みりん:各大さじ1 みりん:大さじ1  塩:少々 <作り方> 1. シイタケは石づきを切り落とします。インゲンは筋を取り除き、さっと湯がいて半分に切っておきます。 2. 鍋にだし汁と調味料を入れ、にんじん、シイタケを入れてひと煮立ちさせ、アクをのぞいたら、戻した凍り豆腐を入れます。蓋をして8~10分ほど分煮ます。 3. 煮汁が少なくなってきたら火を止めて、そのまま冷めるまでしばらく置き、味を染み込ませます。 4. 器に彩りよく盛りつけ、インゲンをそえます。 以下、2つの洋風の簡単アイデアレシピをご紹介します。

<凍り豆腐のトマトソース> 材料(2人前) 戻した凍り豆腐:3枚 オリーブオイル:大さじ1 玉ねぎ:1/2個(みじん切り) ホールトマト:1缶 塩、胡椒:適宜

  1. 凍り豆腐を細かく刻むか、フードプロセッサーでそぼろ状にします。

  2. オリーブオイルを加えたフライパンで玉ねぎ加えてを炒めたら、1. を加えてさらに炒めます。

  3. ホールトマト1缶を加えて10分ほど弱火で煮詰め、塩コショウで味を整えます。好みで赤ワインやスパイスを加えてください。

ラザニア、パスタなどのソースにどうぞ。

<凍り豆腐ののフレンチトースト> パンの代わりに凍り豆腐を使った驚きのメニュー! 材料(1人前) 戻した凍り豆腐:1枚 牛乳:1カップ 砂糖:小さじ1 卵:1個 バター:20グラム 好みでフルーツやシロップなど

  1. 牛乳と砂糖を鍋に入れ、事前に戻しておいた凍り豆腐1枚を入れて牛乳をよく染み込ませるようにスプーンで回しかけながら、弱火で5分ほど煮ます。焦げないように気をつけましょう。

  2. ボウルに卵を割り入れ、半分に切った1.を入れて10分ほど漬け込みます。

  3. フライパンにバター20gを溶かし、中火で2.の両面をきつね色になるまで弱火でこんがり焼きます。

お好みでメープルシロップやチョコレートシロップ、フルーツなどのトッピングを添えて召し上がれ!


4. 手作り即席凍り豆腐を使ったレシピ

市販の凍り豆腐が入手できなくても、がっかりすることなかれ!手軽に家庭で作れる「即席凍り豆腐」の作り方はこちら。ぜひトライしてみてください。 <即席凍り豆腐の作り方> 凍り豆腐はその名の通り、豆腐を凍(こお)らせることによって作ります。凍らせた後、本来は完全に水分が抜けるまで乾燥させますが、今回は乾燥する手間を省いた即席凍り豆腐の作り方をご紹介します。。スポンジのような見た目とユニークな食感を味わってみてください=写真上=。凍結した温度や時間によって食感が変わります。 <作り方>

  1. 木綿豆腐はあらかじめ容器から取り出し、水を切ってからキッチンペーパー2、3枚を重ねてでしっかり包みます。

  2. キッチンペーパーに包んだ豆腐はバットか皿に載せて、一晩冷蔵庫においてさらに水分を抜きます。

  3. 水切りをした豆腐は6~8つに切り、ひとつずつラップで包み、ジップつきバッグに入れ、空気をしっかり抜いたら冷凍庫で一晩凍らせます。

  4. 調理の際は、ラップのまま熱湯に入れて解凍。ラップをはがして優しく絞るようにして水を抜き、調理に合わせて切って使います。

*手作りの冷凍凍み豆腐は冷凍庫保存で1か月以内に食べ切りましょう。解凍したものは日持ちしないので、解凍したらすぐに調理します。

<即席凍り豆腐の唐揚げ>

  1. 水気を絞った即席凍り豆腐は一口大に切り分けます。水気はしっかり絞っておきます。

  2. お好みのシーズニングやスパイスで軽く味付けした後、小麦粉やコーンスターチをまぶしてこんがりと油であげます。

市販の大豆ミートとはまた違った食感を楽しんで。もちろん、フードプロセッサーで細かくしてひき肉代わりに使ったり、スープに入れたり、天ぷらにしても、オリーブオイルでソテーしてもOKです。




5. まとめ

日本の伝統的な保存食「凍り豆腐」をご紹介しました。栄養面でも、その歴史、製法、食感でも日本生まれのユニークな食材ということがご理解いただけたと思います。


実はこの凍り豆腐、宇宙でも食されていました! 

1994年7月、日本人初の女性宇宙飛行士の向井千秋さんがスペースシャトル「コロンビア」で宇宙へ飛び立ちました。この時、宇宙食として持ち込まれたのが、ポケット状にした凍り豆腐にひき肉と刻んだ野菜などを詰めた煮物です=調理イメージ写真上、かぼちゃの後方=。宇宙食の加工に必要なフリーズドライ製法が、凍結乾燥という伝統的な凍り豆腐の製法そのものであることが、宇宙で食す際に食感が変わらない大きな利点になったのです。


日本でも肉の代用食品として「大豆ミート」の人気が高まっており、ハンバーガーチェーンやカフェのメニューでも目にすることが増えています。大豆ミートは日本人にとって新しい健康志向のニーズに見合った食材でありますが、伝統的保存食の凍り豆腐も日本の風土が生み出した大豆由来の健康機能食材とも言えるでしょう。

日本はあなたの知らないユニークな素材がまだまだあります!ベジタリアン、ビーガン、グルテンフリー、アレルギー対応、低糖質など、食の世界においては今、様々な食のニーズに対応することが求められています

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